« UNICORN SME ERA-remastered BOX(DVD付) UNICORN | トップページ | 奇跡―ジミー・ペイジ自伝 »

2013年3月22日 (金曜日)

ZOOEY 佐野元春

ZOOEY 佐野元春

前作のオリジナルアルバム「Coyote」から、すでに5年も経っていたことに驚いてしまった。
いくつか思いついたままに箇条書きでの感想を。

・基本的にはギターアルバム。しかしながら、各ギターの決めのリフやソロを強調した作りではない。そういう意味では、「演奏はギターバンド。アルバム全体はバンドサウンドを強調した作り」。
・バンドアンサンブルにおける個人のアレンジ能力や、メンバー各人の演奏能力には特筆したものを感じないが(比較対象がホーボーキングバンドという点で彼らは可哀想だ)、曲が曲として固まりで迫ってくるような(表現が難しい)見事な仕上がり。アルバム全体を覆うトーンはまさにマジックのようだ。
・2011年発表のカバーアルバム(「月と専制君主」)の発売時には、その制作意図が分かり兼ねたが、今回のアルバムを聞いて、今の声質(声域)と過去の自分の作品との距離感を確認するための作業、モノサシのようなアルバムが「月と専制君主」だったことに気付かされた。
・Deluxe版に同封の佐野さん自身の解説を読んで、「君と一緒でなけりゃ」が、アルバム「The Circle」制作時のアウトテイクであることに深く納得。あの曲だけアレンジが違うし、歌詞もアルバムの方向性と少し異なる。ただ、曲がアルバムから浮いているわけではない。人によってはアルバム中のベストテイクに選ぶのではないかな?と思える凄い仕上がり。
・もう一つ。本人による「世界は慈悲を待っている」の解説の中で、「アンジェリーナ」の文言があったことにニコリとした人も多かったと思う。この曲のイントロ部のギターリフは、まさにスローバージョンの「アンジェリーナ」のイントロのキーボードのリフと同じ。むしろあのテンポのリフにモータウンリスペクトの(そして前作「月と専制君主」のオープニングナンバー「ジュジュ」と同じ)アップテンポが重なってくるアレンジの妙には、まさに脱帽させられる。
・「The Sun」以降に歌われ始めた「ありふれた日常、人と人とのつながり、死生観」が全て詰まったアルバム。それでいてどこにも聞き手への圧迫感がない。自己完結型の「家族愛」や「性善説」に陥りがちな(そのくせ猛烈に説教臭い)日本のヒップホップ勢は見習ったほうが良い。
・Deluxe版Disk2に収録のデモテイク4曲は、ほとんど完成形のラフテイクという感じ。アルバム収録の完成テイクと大きくは違わないので、あえて聞く必要はないかも。
・Deluxe版Disk2のカラオケテイクは完全に不要(笑)。何故これを収録したのか、今の時点では理解不能。
・Deluxe版Disk3のオマケ映像は、スタジオでのやり取りや、完成テイクに合わせたいわゆる当て振りなので、これもあえて無理をしてまでの購入は不要かも。でもとにかく佐野さんが楽しそうだ。
・いつもいつもアルバムを聞く度に思い知らされるが、とにかく曲順が見事。「ビートニクス」~「君と一緒でなけりゃ」と畳み掛けるような展開の後、埋み火のように始まる「詩人の恋」の流れには、もはや言葉が出てこない(オープニングテイクからの3曲の後、「愛のためにできたこと」でのクールダウンにも似たものを感じるが、しかし「ビートニクス」~「君と一緒でなけりゃ」~「詩人の恋」には、ただただ感服させられる)。
・「詩人の恋」の一節。「君の身体に冷たい影が射すなら」が気にかかる。誰か身近な人が重い病にでもかかってしまったのだろうか?
・最新作が常に時代の先を、未開の大地を目指しているという点で、佐野さんの音楽はいつもコンテンポラリーな作品に仕上がっている。
・そして最後に。繰り返しになるが、ここ3作(「The Sun」「Coyote」「Zooey」)で歌われているテーマは「ありふれた日常、人と人とのつながり、死生観」だろう。これらの中で歌われている「別れ」は、日本の楽曲に有りがちな「愛情のもつれ」や「性格の不一致」ではなく、まさに「死別」と捉えた方が納得がいく(全ての作品がそうとは言わないが)。そうした重いテーマをロック、ポップの土壌で展開しようとする点で、やはりこの人はパイオニアだと気付かされる。「The Sun」の頃より、「遠い声に導かれて」始まったこの旅の行き着く先はどこになるのだろう?


|

« UNICORN SME ERA-remastered BOX(DVD付) UNICORN | トップページ | 奇跡―ジミー・ペイジ自伝 »

聴いた音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« UNICORN SME ERA-remastered BOX(DVD付) UNICORN | トップページ | 奇跡―ジミー・ペイジ自伝 »