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2012年5月 6日 (日曜日)

月光 /斉藤和義

月光 /斉藤和義

本人曰く、今がピークだそうである。皮肉でも自嘲でもなく、音楽業界の浮き沈みの速さと、何が売れて何が売れないのかが完全に水物の世界に長くいる立場からの、客観的にして冷静な意見なのだろう。

もともと、シニカルな面もあり、歌詞のいくつかにそうしたムードも感じ取れたが、不思議にインタビューでそうした内側にある本音のようなものを吐き出すことが少ない人でもある。
ただ、その辺りについては自ら語らないことを心がけているというよりも、そこまで突っ込んだ話を世間が求めていないと見なされているようで、インタビューアーもあまり突っ込んだ話を聞いているように見えない。古い話で恐縮だが、アルバム「Because」が出た折に、例えば1曲目の「ジユウニナリタイ」が、前作「ジレンマ」アルバムの最終曲の「幸福な朝食退屈な夕食」のアンサーソングであり、更に2曲目ではその前作であれこれと思い悩む自分の姿を歌ったタイトルチューン「ジレンマ」を皮肉るように、アルバム全体のテーマすらも「煮えきらない男」としてバッサリ切り捨てていることを、「Because」アルバム発売時のインタビューで質問しているインタビューアーは皆無だった。
(さらにいえば、「さよなら」で一旦、アルバムの幕引きを行いながら、映画のエンドロールのように「I'm Free」が始まるが、これが1曲目の「ジユウニナリタイ」と対になっていることにも皆さんお気づきだろうか?ちなみに、この時のツアーではオープニングはドラム(小田原豊)とエレピ(斉藤)だけの2人演奏による「I'm Free」だったのは、なんだか興味深かった)

この人の初期のアルバムにはそういう細かい仕掛けや、試行錯誤の痕跡がイッパイ見える。しかし、あの当時、そこまで突っ込んでこの人にそのことを聞いている音楽雑誌は皆無で(笑)、なんとなくマイペースな飄々とした人という位置づけで、結局ここまで来てしまったようなのが、長年のファンとしては本当に残念である。

話が逸れたついでに。
個人的に「ああ、これ本気でしゃべっているな」と思ったインタビューは過去に2つ。一つはアルバム「Fire Dog」発売後のツアー先でのインタビューで、「ファンから『大丈夫』を聞いて励まされました、とか言われるけど、お前のために作ったわけじゃないよ」と毒づいているインタビューですね。結局、そこまでの4枚のアルバムについて、何一つ納得できずに、思い悩み、葛藤した結晶が次作の「ジレンマ」につながり、ここから一人多重録音が主要な録音にと移行していくわけですが。

あと、もうひとつは、デビュー後5年目で、初のベストアルバム(「Golden Delicious」)に合わせて、シングルを作成していたけれど(当然、会社としては短くてポップな曲を求めているわけですが)、その時に作られた非常にポップな1曲(10年後に未収録曲として別のベスト盤で初登場した「RIDE ON THE SUN」がそれ)をあっさりボツにしていて、たまたまそのタイミングでこの曲(「RIDE ON THE SUN」)を聞いていたインタビュアー(確かロッキンオンジャパンの記者だったかな?)が、どうしてこれをシングルにしないんですか?という質問を真剣に聞いているインタビュー記事。(確か回答は、「いやなんとなく嫌で」だったような(笑))

まあ、その時点ではファンである我々は「RIDE ON THE SUN」は聞けてないわけですが、そのポップな曲の代わりに出てきた曲が本気で売る気があるとは思えない「ソファ」という時点で、「この男、すごいわ」と、心の底から感心しました。

だからまあ、長々と書いてしまいましたが、本当に今のちょっとしたブームを、この人はまったく気にしていないだろうなと、自信を持って言えます。だって初のベストアルバム発売後のツアーで、バンド編(後に「Golden Delicious Hour」として発売)でも、そして初の弾き語りツアー(後に「12月」として発売)でも、一番良い所で演奏される最新シングルが「ソファ」ですからね。いや、どちらも会場で見ましたが、本当に呆れました。こののんびり横に揺れているだけの9分も続く曲で客にどうしろというのか?と(個人的にはスゴイ面白かったですが)。ほんとにあの頃から凄かった。この人のトンガリ具合は本物ですよ。新曲の話を全くしてないけれど、まあそういうことで、このピークが少しでも長く続くことを願ってます。

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