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2011年2月 4日 (金曜日)

祝福/長嶋 有

祝福
長嶋 有

不思議な読後感。いや、読書中にも感じる不思議な感じ。
重たい話でもないのに、何故だか、読んでいる最中にも「これ展開が重たくなったりして」と、おかしな警戒感が先にたってしまう。

もともと、この人を読み始めたのは、どこかの書評で紹介されていた「ねたあとに」を読んでからだった。あれはどこかの山小屋で、微妙な繋がりの人たちが、ゆるい関係のまま、なにごとかが起こるのか?と思わせておいて、何も起こらない日々を描いた作品。休暇のようでいて、どこか心の底から休まることの無い不思議な時間を共有する話。だからと言って、何かしら説教くさいわけでも、何かを示唆させるような展開というわけではない。ただ、淡々と時間が流れていく。

そう、この人の作品はどこかしら、暢気で単調に時間だけが淡々と流れていく。しかし事態はそれほど暢気でもなく、登場人物もその暢気さが本物でないことに、どこかしらあきらめているような、何かしら不思議な時間が流れている。

最新刊の「祝福」は短編集。「ねたあとに」の山小屋を思わせる場所に一人で行く「ジャージの一人」や、花火大会の何気ない人との出会いを書いたスケッチ風の「穴場で」、友達との他愛ないやり取りを描いた「山根と六郎」など、何か起こるのか?と思わせていて、何も起こらない、それでいて何かの始まりを予感させる短編がいくつか、いつものペースで収録されている。
どこか暢気でいて、事態は確実に緊迫している「噛みながら」も、どこかしら当事者は他人事になっていて、最後の急展開の中でも視点は冷めている。子供が主人公のはずの「十時間」ですら、世の非情の前に、(そして降りしきる雪のために)回復不能なほどに冷え切った視点で話が進められていく。(個人的にはこの「十時間」がベスト)

実に不思議で、独特な読書感。
この人が徹底的に暴力的で、陰湿な世界観の小説を書いたら、それはきっとものすごいものになるのだろうな、とふとそんな風に思ってしまう。
なお、収録された短編の発表時期は、2003年~2010年まで幅広い。

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