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2011年1月11日 (火曜日)

リトル・シスター  レイモンド チャンドラー

リトル・シスター
レイモンド チャンドラー/村上春樹 訳

村上春樹訳のチャンドラー本、3冊目。2010年12月発売。
名作「ロング・グッドバイ」を2007年03月に訳出したため(その後、2010年09月に文庫化)、もはやチャンドラーの翻訳は無いだろう、と個人的に思っていましたが、2009年04月に「さよなら、愛しい人」を意外にも出してきましたね。さらに今回の訳出で3冊目。このペースだとチャンドラーのフィリップ・マーロウシリーズは全て訳すつもりなのかな?。

よく知られているように、過去に清水俊二訳で出されたものでは、作品の一部が訳出されずカットされた状態で出版されていました。そのため村上訳によって、完全版が全てが読めるということです。ただ、過去の清水訳が完全版で無いことに、大きな不満を感じている人はそれほど多くないと思います。ハードボイルドという作品の性質上、多少の省略や飛躍は許されるものだと思っています。(それに清水訳は、あまり古さを感じさせません。ハードボイルドという分野を日本に広めたその功績の高さは、清水氏の訳出の素晴らしさに負うところが大きいでしょう)

ただ、そうは言っても今回の作品。訳者あとがきにもありますが、やや展開が無茶だったり、論理的とは言いがたい部分も若干あります。これは原作側の問題ですし、当時この小説を執筆していた作者側の事情によります。そこをあまり神経質に考えなければ、おなじみのマーロウが、おなじみの展開で活躍をしてくれます。読み始めてたちまち「ああ、懐かしい」と思えるし、いつものやや不条理とも思える展開が、まさにチャンドラー的な展開に思えてきます。(それにしてもこの話、結局、誰が誰を殺したのでしょうね。後半の種明かしが、まったくバタバタのように思えますが)

「ロング・グッドバイ」は確かに名作で、数々の名シーンがありますが、一気に読むには少し長すぎます。あと難を言えば、せっかく文庫化したのに、価格設定が高すぎます(せめて800円以内にして欲しかった)

今回の作品は、ハードボイルド小説をあまり読んでこなかった人、チャンドラー初心者の方に、入門編として読んでもらいたいです。

ついでに、個人的に好きなハードボイルド作品を2作、記しておきます。

モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール (新潮文庫)
ロバート クレイス

すでに絶版ですが、ロスの探偵エルヴィス・コールが主人公のハードボイルド作品。一見、軽妙な展開に見えながらも、実にオーソドックスなハードボイルドの展開です。サブキャラのジョー・パイクがとにかくかっこいい。
そのシリーズ1作目。このシリーズは後に扶桑社に移行しましたが、今でも探せば、全作品がそろいます。ブックオフ等でよく見かけるので、時間があれば探してみてください。

そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))
原 尞

完全なチャンドラーフォロワーの作者によるマーロウシリーズの再現のような作品。そのシリーズ1作目。まあ実に見事な作品です。日本人がこれを書いたというところに、日本でのハードボイルドブームが確かにあったということを思い知らされます(それはもちろん、清水氏のチャンドラー訳の素晴らしさでもあるのでしょう)。


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