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2011年1月 4日 (火曜日)

Gone対訳の解説

Gone対訳の解説

Trey Anastasio(トレイ・アナスタシオ)からのクリスマスプレゼントとして無料ダウンロードで提供されたストリングスとのライブショー。この演奏は素晴らしいものでした。(関連記事はここ

何度もその日のショーを繰り返して聞いているうちに、何曲かについて、歌詞の内容がとても気になったので、そのうちの1曲を訳してみました。
近年、トレイのお姉さんが亡くなられました。この歌は、おそらくは彼女のことを歌ったものなのだろうということは、一部聞き取れた歌詞から想像はしていたのですが、いやはや、何ともストレートな歌詞で、訳すべき言葉が何箇所かで思いつきませんでした。

まず訳しにくいのは冒頭の2行

Running from yourself
Come back from the dead

「君自身から駆け出して」、まずこの意味が分かりません。「君自身から駆け出す?」
慣用句ではない言葉だと思います。そして2行目のthe dead。これは「死者」です。「死んでしまった状態」のことです。直訳すれば「死者から戻って来い」です。死者の立場からこちらに戻って来い、と語りかけています。あまり意訳はしたくない方ですが、「死者の群れから戻っておいで」にするか?と思いましたが、少し先を読めば分かりますが「生き返ってくれ」と言っているわけではありません。極力言葉のままに訳そうと、「亡骸」をあてました。あまり良い訳語ではないですが。

ここまで読むと、この曲は死んでしまった「あなた」に対しての語りかけです。「魂」に話しているということでしょう。不安から「眠れなかった夜」、病からくる「全ての痛み」、事故による突然の死ではなく、長い闘病であったことが分かります。

短めのサビも実に直接的です。

I'm sorry you're gone
But you're gone

このsorryを「悲しい」と訳すか、「申し訳ない」と訳すか、ずいぶん迷いました。普通に考えれば前者です。ただ何故sorryなんだろう?と考え出すと、単純な「悲しい」で良いのだろうか?と考え込んでしまいます。でも、よくよく考えればこれは亡くなった人の「魂」への語りかけです。会話文として考えれば、I'm sorryはごく自然な語りかけです。考えが一巡りしたところで、「悲しい」と訳しました。

この歌詞の中で、一番「え?」と驚いた箇所は次のこの部分です。

Stop bleeding from your head anymore

bleed は「出血する」です。訳は実に単純です。「あなたの頭からの出血は、もうこれ以上流れ出さないように止めてくれ」です。ちなみに、bleeding from the head とは、「頭部からの出血」です。強烈な歌詞です。ただ、こんなの歌の歌詞にはなりません(笑)。重ねて書きますが、体の中を血がめぐることではなく、体外に流れ出した血のことです。まさに「出血」です。うーん、難しい。こういう部分を小奇麗に意訳するのは、私の趣味ではないので、極力そのまま訳しましたが、それにしてもこんなストレートな歌詞でどうするの?と思います。私の訳は「頭から流れていた血は もう止めておくれ」です。本来は命令文ですが、まあお願い口調にしました。死ぬ直前まで頭から血を流していたということでしょうか?少し前の「眠れなかった夜」と少し矛盾するような気がします。トレイのお姉さんの死因を調べなおした方がいいのかな?と少しだけ思いました。
ただ、この部分を訳して、「これはかなり直接的に訳した方がいいな」と思い、タイトルのGoneを「君は死んでしまったんだ」にしました。

次のここも少しだけ訳しにくいです。

The devil has you down
So turn around
And rise into the light

悪魔(死神かな?)によって、君は下を向かされた(あるいは下に招かれた)。
向きを変えて(下の反対だから上でしょう)、(空に)上って、光と一体化しろ、と言っています。
「down」、「turn around」、「rise」、この流れで下向きの矢印が上向きに変わります。ただ、そこまで日本語として忠実に訳すとクドくなります。
また intoで、光と一体になれという部分は訳すとすれば「光とともにあれ」でしょうが、あまりに大層な日本語です。気分の問題ではありますが、そこまでこの歌い手の主人公は吹っ切れていないと思いました。親しい人の死に戸惑いながらも掛けられるだけの言葉を、思いつくままに投げ掛けている様子があると思いました。やや弱いですがここは、「光の方に上っていけ」という軽めの言葉にしました。

後半は後追いコーラスがメインになります。主人公が死者に掛ける言葉、それが先ほどの1、2番の歌詞の合間にフラッシュバックのように差し込まれます。主人公の混乱だと個人的には思えましたが、ここもなかなかに「あれ?」と思わされる部分があります。

(And there's no sun left in your eyes)

意味は「君の目の中には、太陽はひとつも無い」です。ものすごく直接的です。しかもかなり否定的で、死者に対して、あんまりな発言だと思います(笑)。
まあここで思いつきの慰めを言ったところで、死者が生き返るわけではないのですが。それにしても、この部分は、あんまりだなあと思います。

(You looked right through me)

慣用句ですね。「僕の中を眺め回して真実を見ていた」→「嘘は見抜かれていた」→「お見通し」ということです。患者とそれを見舞う人々の間で交わされる重い嘘のことなのでしょうか。後追い直前のフレーズが「眠れぬ夜」と「すべての痛み」であることを思えば、直るはずのない病について、励ましのために掛けられた嘘のことかもしれません。

(Left alone sleeping)

難しいですね。意味は「眠りながらただ一人残された」です。ただ、これは主人公のことなのか、亡くなったあなたのことなのか?おそらくは前者、ただどちらとも取れる部分です。曖昧に訳しておきました。

(Cross the river with your friends)

死者が川を渉るイメージが、西洋にもあることが分かります。日本で言えば三途の川ですね。
Grateful Deadの歌詞にも、死の時が近づいて、泥の川に沿って歩く歌詞があります。先に死んだ友たちが迎えに来てくれるということでしょうか。この辺りはなかなか興味深いです。

さて、ざっと(その割りに長々と)書きましたが、一応これは模範解答ではありません。間違いやおかしな箇所があれば指摘ください。

対訳に関する私の持論ですが、「(1)翻訳や対訳に明確な正解はない」ということがひとつ。なぜなら文化的な背景が違うために、完全な理解はありえないということがあるからです。ただ、意外に忘れがちなのは、「(2)ただし、明らかな間違いはある」ということです。
翻訳や対訳の間違いを指摘されると、まるで人格を否定されたように取り乱したり、「俺の訳はこれだ、翻訳に正解はない」と開き直る人がいますが、個人的にはそれは見苦しいと思います。間違いの可能性を自分なりに推敲して、文法的な間違いや、文化的な間違いは素直に受け入れましょう。感性の問題かな?という場合は、まあその限りではありませんが。


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