« ソフトウェア開発 で伸びる人、伸びない人 | トップページ | 愚かものよ »

2006年1月30日 (月曜日)

博士の愛した数式

hakusi
「博士の愛した数式」  小川洋子 著

人はなぜ、小説を読むのか?

個人的な解答は、そのオハナシの中に入りきって、その世界観に身を任せられるからではないかと思う。

おかしな国のおかしな登場人物と、おかしな法律(ルール)にしばられた人々の暮らしを、現実世界からは少し(時には似ても似つかぬほどに)かけ離れた世界として見ることに(そしてもちろん奇妙に類似した共通項に)、多くの発見を感じるからではないからだと、そんな風に思う。

さて、本書のあらすじは極めて単純。
直近の記憶を80分までしか持つことが出来ない老いた数学者の「博士」と、彼の身の回りの世話をするために雇われた家政婦でシングルマザーの「私」、そして博士から「ルート」と名づけられた彼女の息子の奇妙な共同生活の話。

少し前、テレビで映画の予告が流れていた際は、「ふーん」とまったく関心が持てなかったが、本屋で文庫版の解説を読んだ後で、「これは面白そう」と思い直し、買って帰って一気に読みました。これは面白い。

「博士」によせる「私」の思いは、恋愛でも親子愛でもなく、家族愛とも少しだけ違う。解説文を書いた数学者は「慕情」というややぼかした言葉を使っていた。でも個人的には、混じりけもなんの形容詞も付かない「愛情」という言葉以外は思いつかない。(そして意外にも、文中に描かれたもっとも強い「愛情」は、「博士」のそれこそ世界中の子供たちに向けられた愛情である)

最初読み始めたとき、登場人物のキャラや舞台設定が強すぎるため、このまま最後までお話として成立するのかな?と心配になったが、そこはとてもうまく描かれている。

おそらく、この話を読んだ多くの人が誰かにこの小説のことを伝えたくなるだろう。でもその時、きわめて単純なあらすじは伝えられるだろうけれど、この小説のもつ何かを伝えることがうまく出来ずに、「とにかくまあ読んでみてください」と言ってしまうと思う。

優れた小説、いや「オハナシ」というものは、いつだってそういうものだから。

|

« ソフトウェア開発 で伸びる人、伸びない人 | トップページ | 愚かものよ »

読んだ本」カテゴリの記事

コメント

数日前に図書館に予約したところでした。そろそろ予約が減ったかなと思って。
でも、予約してから知ったのですが、映画がちょうど上映されているようで、最近また予約が増加しているようです。
私に順番がくるのはだいぶ先になりそうですが、早く読みたくなりました。とにかく、読んでみますよ(笑)。

投稿: まゆ | 2006年1月30日 (月曜日) 12時55分

>>まゆさん

そうかもう公開されているんだ。多分見に行かないだろうな(笑)。えーっとたしか寺尾聡と深津絵里でしたね。深津絵里はそれっぽいけど、寺尾聡はすこしイメージと違うなあ。

まあ、古谷一行と市原悦子というキャスト(今思いつきました)よりはずっと良いけど(笑)。

http://hakase-movie.com/
映画のオフィシャルサイト見つけました。原作で大きなウェイトを占めた「江夏豊」は端折られたようですね。江夏の野球カードを「ルート」が探しまわる場面は個人的に好きでしたが。

投稿: asaden | 2006年1月30日 (月曜日) 14時29分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/25669/8413387

この記事へのトラックバック一覧です: 博士の愛した数式:

« ソフトウェア開発 で伸びる人、伸びない人 | トップページ | 愚かものよ »